主任調査員の金子です。
7月21日(金)に新横浜グレイスホテルで開催された2023年度日本青年会議所石材部会第2回通常総会へご招待いただき、「参拝者から見たお墓の特性~過去から未来へのヒントを探る~」と題し、1時間ほどの講演を行いました。
日本青年会議所石材部会様とは弊社吉田代表が以前講演にお招きいただくなど、ご縁があり、今回私が講師としてお声かけいただきました。
プライベートな研究と弊社の調査と双方でお墓をはじめ石造物に接することが多く、今まで様々なお墓・石造物を見てきた中で得られた知識、感じたことなど、幅広い内容でお話いたしました。
講演内容の一部をご紹介します。
日本におけるお墓は古代の遺跡や古墳などからはじまる歴史がありますが、「文字を刻んだ石碑」としては飛鳥時代~奈良時代に建てられた「日本三古碑」と呼ばれる石碑があります。
その一つ「多胡碑」がある群馬県高崎市には日本最古の碑と呼ばれる「上野三碑」があり、2017年に「ユネスコ世界の記憶」に登録されています。
「上野三碑」を巡るには上信電鉄吉井駅より無料巡回バス「上野三碑めぐりバス」が毎日運行しており、多胡碑記念館には三碑に関する資料のほかに、中国の石碑の拓本など三碑のルーツに関する資料も展示されています。
私も現地に行き3ヶ所を巡ってきましたが、確かに飛鳥時代の石碑の文字が読み取れました。
このように飛鳥時代より始まった石に文字を刻む文化が発展していき、やがて墓碑・記念碑・顕彰碑や寺社への寄進物など、さまざまな石造物が作られ、そこに文字が刻まれていきました。
自然災害が多い日本において、紙に勝る歴史史料となっていきました。
このような石造物の歴史や、私が見てきたさまざまな形態のお墓・記念碑、母の墓を建てた経験、近年のお墓の無縁化・墓じまいのことなどをお話し、その中に石材業界の皆さまの将来に何か役立つことがないかということを探る講演内容となりました。
終了後の懇親会にも参加しましたが、日本各地の石材屋さんが出席しており、中には十数代を数える方もおり、石材のこと、業界のことなどさまざまなお話を聞くことができ大変有意義な時間を過ごせました。
懇親会でも挨拶いたしましたが、その際に次のようなことを述べました。
私の仕事は過去にさかのぼって調べていく仕事ですが、皆さまは未来に向かっていく仕事だと思います。それは私が各地の石造物を見るたびにこれを作った石工さんに思いをはせるように、未来の人たちが皆さんの造ったものを見て思いをはせる。とても素晴らしいお仕事だと思います。
少子高齢化など社会問題が複雑化する中、石材業界の皆さまも悪戦苦闘をしている状況ですが、わが国において長い歴史を持った石造物の文化の奥深さの中に将来のヒントがあるのではないかと思い、エールを贈りました。
改めて、講演をお聞きいただきました皆さまに感謝申し上げます。