三井記念美術館特別展「三井高利と越後屋―三井家創業期の事業と文化―」を見る

主任調査員の金子です。

先日、三井記念美術館で行われている特別展「三井高利と越後屋―三井家創業期の事業と文化―」を見に行きました。

三井グループといえば日本を代表する大企業グループですが、その始祖となるのが、三井高利です。戦国時代に近江六角氏に仕えていた三井越後守高安は、六角氏が織田信長に滅ぼされると、伊勢国方面へ逃れ、松阪へ土着しました。高安の子高利は父の受領名「越後守」にちなみ「越後屋」の屋号で商売をはじめ、松阪で成功したのち江戸に進出し、現在に続く三井の祖となりました。

今回の特別展は家祖高利を中心に三井の創業期にスポットをあてた内容になっています。

さすが三井ともあって、茶器など美術品も数多く展示されていましたが、私が注目したのは文書類です。

三井家の来歴をまとめた「家伝記」、高利の遺書、家法の草稿など、家の歴史に関わる文書は大変興味深いものがありました。

また、帳簿である「大福帳」はよく見かける一般的な商家のものと比べて桁はずれに分厚いもので、大変驚きました。

親族の伊勢御師や三囲神社、顕名霊社といった祭祀や信仰に関わる史料も興味深いものがありました。

三井のような大規模な商家はなかなかありませんし、江戸期の商家の実態を正確にとらえるのであれば、もう少し規模の小さい商家を基準に考えねばなりませんが、武士から商人、地方から江戸という流れは江戸期の商家調査でよく聞く話であり、今回の展示でその過程がよく分かり大変勉強になりました。

特別展「三井高利と越後屋―三井家創業期の事業と文化―」は8月31日(木)まで開催されています。